僕は幼く、じいちゃんが健在だった時のある出来事。
最近はあまりなくなって来たように感じるが、昔の田舎なんかだとご近所付き合いがもっと濃厚だった気がする。
頻繁にじいちゃんばあちゃんの友達や客人が家へ遊びに来ていた。
物乞いをしてまわる老人には飴玉をあげた記憶がある。
いつもくる薬売りのセールスマンは片方の手の指がなかったのが印象的だった。
そんな中じいちゃんと顔を合わせる度に言い争いをする爺さんがいた。
ふたつみっつ隣の家の爺さん。
家の居間から庭を見渡す窓をはさんで網戸越しにバトルをする。
「いだが〜?!」
あの夜も突然の訪問。
僕ら家族としては慣れっこで相手にしないが、じいちゃんは毎度受けてたつわけだ。
暗いし顔を見せるうえでもカーテンくらいあけてバトルしたらいいのにとみんなで笑った。
後になって…その爺さんはその日、夜を迎える前に亡くなっていたことを知った。